版築は層状に土を固めて壁体をつくる構法である。山土やその場の土に、砂や小石も混ぜたままに、土の粘性を見ながら、せき板につめて、層状に突き固める。塗壁、練塀など他の土構法とくらべて、もっとも水を必要としない構法である。
版築壁は世界ところどころで土塀、堡塁、土壁などとして古来より用いられてきた。中国大陸の黄土でできた万里の長城が有名だが、私が訪ねたボリビアの民家や北フランスの畑の土塀もおおむね同じつくり方であった。日本では、寺院や城の基壇や塀に、また農家の納屋や小屋など簡便なたてものにも使われてきた。古くは法隆寺の築地塀があり、いまも職人によって技術が受け継がれている。
「千葉・版築のいえ」は、版築壁のあらたな可能性を試みた建築である。版築壁には、再生可能な粘土質の土がふさわしいが、「風土資源」をいかすという旨から、その場の土を採用した。
敷地の上総丘陵は砂岩泥岩交互層からなる明瞭な縞状の地層である。土はほとんどが砂・シルト質のため、石灰とセメントをまぜ突き固めた。